【本紹介】人生を変える"哲学"はこの本から【武器になる哲学】

目次

無教養は『危険な存在』

今回は、山口周氏著『武器になる哲学』を紹介します。

『役に立たない学問の代表』とされがちな『哲学』。

そんな哲学をなぜ名高い海外のエリートは三学領域の筆頭と言われるまでに重視するのか。

当時シカゴ大学の教授であったロバート・ハッチンスはこう言います。

『無教養な専門家こそ、われわれの文明にとって最大の脅威』であると。

哲学を学ばすに社会的な立場だけを得た人、そのような人は危険な存在であるということです。

では、なぜビジネスパーソンが哲学を学ぶべきなのか、順に説明していきます。

哲学を学ぶメリット

本書では、哲学を学ぶメリットとして以下を挙げています。

  1. 状況を正確に洞察する
  2. 批判的思考のツボを学ぶ
  3. アジェンダを定める
  4. 2度と悲劇を起こさないために

哲学を学ぶ最大の効用は、『いま、目の前で何が起きているのか』を深く洞察するためのヒントを数多く手に入れることができるということ。これから何が起きるのかをより深く理解するために、過去の哲学者が提案したさまざまな思考の枠組みやコンセプトがその一助になります。

また、哲学の歴史は、提案、批判、再提案を繰り返して積み上げられたものです。この考え方が現代社会の『自分たちの行動や判断を無意識のうちに規定している暗黙の前提』に対して意識的に批判し切り口を得る助けともなります。

アジェンダとは『課題』のことです。イノベーションが起きる時、それは必ず具体的な『解決したい課題』があってのものです。そんな創造に必須である課題の設定能力を高める鍵が教養と言われています。

最後に、過去の多くの哲学者は、同時代の悲劇を目にするたびに、どのように私たちの愚かさを克服すべきかを考えてきました。人類はこれまでに高い授業料を払って、様々な失敗から教訓を得ているのです。この教訓を学んでいるかどうかでより高い水準で知性を発揮することができるかが決まるのです。

『哲学を学ぶならこの本』の理由

数多く出版されている『哲学入門』。

その数の多さはいまだに決定的な定番が書かれていないことを表しています。

そんな中で本書をお勧めするポイントが本書に示されています。

  1. 目次に時間軸を用いていない
  2. 個人的な有用性に基づいている
  3. 哲学以外の領域もカバーしている

『哲学入門』のほとんどは、哲学の起源から順に書かれています。そうすると最初に行き着くのが古代ギリシアの哲学のつまらなさ。当時の考えは現代では明らかに間違いであったり、当然の知識であり、そこから学びを得ることが難しくここで読むのを辞めてしまう人が多いようです。

本書の違いは時間軸でなく『使用用途』によって書かれていること。問題に対してその答えやヒントを持っている哲学者を紹介しています。ついてない、時代もよくないと項垂れているいる人に、『逃げてばかりでアンガージュマンしないのか?』というサルトルの問いをぶつけるような構成になっています。

2つ目のポイントは、『楽しく、自分らしい人生を送って、幸福になること』を目的とした個人的な有用性に基づいている点です。カントやスピノザなど哲学史における偉人たちが紹介されていないのは、彼らの思想が我々の生活に還元しにくいものであり、本書はあくまで組織、人材に関するコンサルティングや実生活における問題の解決における実用性を重視して作成されています。

最後に、哲学とは経済学や文化人類学など他の全ての学問に通ずる分野であり、必ずしも哲学史に名を残すのが哲学を専門とした人ではないことから本書では哲学、思想以外のコンセプトも取り上げています。あらゆる分野での発見や知見を援用しながら、人や社会や世界のあり様についての洞察を縦横無尽に巡らせるのが哲学という営みであることを前提としています。

本書を読んだ感想

『より良い人生を送る』ことを目的とした50のキーコンセプトを紹介している本書は、専門的な用語はあれど丁寧な説明でわかりやすい内容になっています。特に『どのように生活に生かすか』についてはかなり明確に示されていて、違った視点での問題の捉え方や解決方法など新たな気づきが集約されています。

本書を読んでしばらく経ちましたが、「こういう場面でこういった考え方もあったな」というような偉人の名前は忘れてしまったけど知識は活きているように感じます。

教養のために『哲学入門』を読み始める方もおられるかと思いますが、難解な表現から自身で気づきを得るのは骨が折れるかと思います。まずは、本書を読んで生活と哲学の身近さを感じてもらいその上で諸『哲学入門』を読む方が理解を深めるには近道だと思います。

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